プロジェクトの要約:ルワンダのスラム街で暮らすシングルマザーや少女たちがテーラー技術を習得し、自立できる環境を提供することを目指しています。KISEKI Ltdの支援で、彼女たちは職業訓練を受け、家族のために誇りを持って働きたいという強い意志で学んでいます。
プロジェクトURL:【スラム街から雇用を生み出す】ルワンダの女性が自立できる職場を届けたい!
ミシンをシングルマザーの手に。
成田:クラウドファンディングが無事終了してから1年が経ちましたが、実際にプロジェクトが動き出してからの状況について教えていただけますか。
大沼さん:クラウドファンディングで支援金が集まった後、まずは現地のシングルマザーたちのためにミシンを購入する準備を進めました。最初は資金のやり取りや物資の調達がうまくいかず、少し手間取りましたが、現地の協力者であるテイラーのデオさんや、「KISEKI Itd」という現地の支援団体のスタッフたちが手助けしてくれたおかげで、物資を無事に現地に届けられました。実際、プロジェクトが本格的に動き始めたのは私が帰国してからで、現地に滞在中には準備が整わなかった部分もありました。しかし、スタッフたちが協力してくださったおかげで、スムーズにプロジェクトが進行し、支援対象となっていたシングルマザーたちがミシンを手にすることができました。
成田:そもそも、どのようにしてこのプロジェクトを実施することが決まったのでしょうか。
大沼さん:もともと、私はKISEKI Itdでインターンをしていました。KISEKI Itdは、ルワンダで、女性たちの雇用創出をしている現地団体です。このプロジェクトの背景には、ルワンダの社会的状況が大きく影響しています。ジェノサイドの影響で女性が社会の中心になり、自立を余儀なくされる環境がある一方で、まだ十分な支援や雇用の機会が整っていない現実がありました。その中で、クラウドファンディングを活用して、彼女たちに少しでも安定した生活の基盤を提供することが目的でした。
成田:実際に、現地のシングルマザーたちにミシンを届けられて、どのような反応がありましたか。
大沼さん:現地にミシンが届いた後、彼女たちが初めてミシンを使う様子を動画で送ってもらったのですが、その時の彼女たちの喜んでいる表情は、本当に忘れられません。
ミシンがもたらした、自立した生活。
成田:実際にミシンを使い始めて、現地の女性たちにどのような変化がありましたか。
大沼さん:一番大きな変化は、彼女たちが経済的に自立するための手段を手に入れたことです。最初は縫い物に自信がなく、「私にはできない」と思っていたお母さんたちも、だんだんと自分でバッグや衣類を作れるようになり、それを販売することで収入を得るようになりました。彼女たちの生活が少しずつ改善され、子どもたちの教育費や生活費を自分たちの力で賄えるようになったことは、大きな成果だと思います。彼女たちが自分の手で何かを作り、それを売ることで自信をつけていく様子に、感銘を受けました。
成田:子どもたちへの影響もあったのでしょうか。
大沼さん:そうですね。特に、教育の面で変化がありました。安定した収入が得られるようになったことで、子どもたちが学校に通うための費用が確保できるようになり、また食事や生活環境も改善されました。親の収入が増えることで、子どもたちの未来も広がるというのを実感しました。
支援者へのリソースの限界
成田:プロジェクトを進める中で、どのような課題がありましたか。
大沼さん:大きな課題として感じたのは、支援できる人数が限られていることです。今回のプロジェクトでは、13人のシングルマザーが対象でしたが、その中で実際にミシンを使って製品作りを進められたのは3人だけでした。残りの10人も何らかの支援を必要としていましたが、限られた資金とリソースでは、全員を支援することができなかったんです。選ばれた3人の中には技術の伸びしろがある方々が選ばれましたが、全員を支援できなかったことが心残りです。現地での判断は、現場のスタッフとテイラーのデオさんに任せましたが、その選定も容易なものではなかったと思います。
成田:支援対象者を選ぶというのは、難しい決断だったのですね。
大沼さん:はい、どうしても限られた資源の中で支援を行うことになりますので、すべての人に平等にチャンスを与えることは難しいです。でも、それでも支援を受けた3人が成長し、他の女性たちにもポジティブな影響を与えられたことは、このプロジェクトの大きな成果だと思います。
クラファンを通じた新たなご縁
成田:クラウドファンディングを通じて、他に印象的だったエピソードはありますか。
大沼さん:クラウドファンディングを通じて、単に資金を集めるだけでなく、本当に、いいつながりに巡りあえたことです。私がクラウドファンディングのページを作成していたとき、埼玉の「メリーアティック」という学童の代表である石原さんと出会うことができました。実は、その頃私は学童に関心を持っていて、ちょうど何か関わる機会があればいいなと思っていたんです。そんなタイミングで石原さんがページを見てくださり、「うちで活動してみませんか?」と声をかけていただきました。
成田:それはすごい偶然ですね!学童での活動は、その後どうなったのでしょうか。
大沼さん:石原さんのご提案のおかげで、帰国後すぐにその学童でアルバイトを始めることになりました。資金調達のために始めたクラウドファンディングでしたが、それ以上に大切なつながりや新しい活動の機会を得ることができたのは、本当に驚きであり、大きな成果でしたね。クラウドファンディングは共感や協力を呼び込む強力なツールだということを実感しました。
今後の展望:ビジネスを通じた国づくりの可能性
成田:これまでのプロジェクトを振り返って、今後どのような挑戦をしていきたいですか。
大沼さん:今後は、ビジネスを通じて途上国支援にさらに深く関わりたいと考えています。ルワンダで感じたのは、ボランティア活動が募金や寄付に依存し、継続が難しいことでした。そのため、ビジネスの力で持続可能なサイクルを生み出し、国の基盤を支える仕組みを作ることが必要だと考えるようになりました。それが彼らの自立を促し、支援を受け続ける状態から抜け出す助けになるはずです。
成田:具体的にはどのようなプロジェクトを考えていますか。
大沼さん:インフラ整備や食料、エネルギー、衣服といった日常生活に関わる分野で、持続可能なビジネスモデルを構築し、地域全体の生活を改善するような大規模プロジェクトに挑戦したいと考えています。
成田:その中で、ルワンダでの経験はどのように生かされているのでしょうか。
大沼さん:ルワンダで、少しの支援でも大きな変化が生まれることを実感しました。女性が自立に必要なスキルを身につけることで、次世代にも大きな影響が広がります。一方で、現地の経済的な困難や社会的弱者の現状も目の当たりにし、ビジネスの力で持続可能な支援サイクルを作り、自立を支援することの重要性を再確認しました。途上国支援は単なるチャリティーではなく、彼らが未来を切り開くために必要だと感じています。
理想の社会:こどもたちが生きやすい社会
成田:プロジェクトを通して、大沼さんはどのような社会を目指しているのでしょうか。
大沼さん:そうですね、私が目指しているのは、未来の世代にとって生きやすく、希望を持てる社会です。ルワンダでの活動を通じて、シングルマザーたちが経済的に自立することで、彼女たちの子どもたちがより良い教育を受け、より豊かな未来を描けるようになる姿を見ました。その中で、支援が次の世代に良い影響を与え、連鎖的に社会全体が良くなっていくのを実感できました。そこで、子どもたちに焦点を当て、彼らが夢や希望を持ち、成長していける環境を作ることが、私の大きな目標です。10年、20年、さらには50年後にも、人々が安心して暮らせる社会を作りたいと思っています。
編集後記:今回の記事では、当時大学生でありながらKISEKI Ltdでインターンとして活動していた大沼さんにインタビューしました。大学生という立場で、クラウドファンディングに挑戦し、見事に大成功させることで、ルワンダのシングルマザーたちへの支援を実現しました。彼女たちはミシンを使って製品を作るスキルを習得し、この技術を通じて経済的自立を果たし、家族を支え、子どもたちの未来を切り拓く手段を手に入れることができました。一方で、大沼さんは支援の限界を痛感する場面もあったとのことです。今後はさらに多くの人々に支援を届けるため、プロジェクトの規模拡大を目指し、ビジネスを通じた途上国全体の生活環境改善に向けて挑戦を続けていきます。大沼さん、貴重なお話をありがとうございました。