プロジェクトの要約:「はまじぃの家」は、老犬ホームではなく、飼い主が愛犬と最期まで一緒に過ごせるよう支援する無料のデイサービスです。高齢や病気で介護が必要になった犬を日中預かることで、飼い主の負担を軽減し、飼育放棄や安楽死を防ぐことを目指しています。老犬たちが安心して過ごせる環境を提供し、飼い主と愛犬が幸せな時間を共有できるサポートを行っています。
プロジェクトURL:無料デイサービスをご利用の老犬さん達の為、優しい床に張り替えたい!!
無料老犬デイサービス!資金の活用方法とは?
岸野:クラウドファンディングを実施した理由について教えていただけますか?
加賀爪さん:私たちの活動は、ペットホテルの収益を使って老犬介護の無料デイサービスを提供するという仕組みで運営しています。しかし、コロナ禍の影響でペットホテルの利用者が減少し、収益が大きく落ち込みました。それでも、介護を必要とする老犬たちは待ったなしの状況です。これ以上サービスを縮小するわけにはいかず、なんとか現状を維持しつつ、さらに環境を改善していきたいという思いがありました。そのために、クラウドファンディングを決断しました。
岸野:コロナ禍、大変だったんですね。クラウドファンディングで集まった支援で、どのようなことを実現しましたか。
加賀爪さん:まず老犬たちが過ごしやすい環境を整えるために床の張り替えに使わせていただきました。以前の床は、劣化が進み、つまずいたり、滑ったりと、犬たちにとって危険な状態でした。今回、購入した、滑り止めの付いた床材は、歩行が難しい老犬や車椅子を使用している犬にとって、特に役立っています。床を改修したことで、彼らが安全に歩き回れるようになり、飼い主さんからも「安心して預けられる」という声をいただいています。
そしてもう一つ大きな成果が、送迎用の車を購入できたことです。実は、クラウドファンディング実行中に、車が故障してしまうというアクシデントに見舞われ、急を要する状況でした。新しい車のおかげで遠方の飼い主さんや高齢の方にも対応できるようになり、現在では毎日フル稼働しています。介護が必要な犬を連れて行き来する際も快適になり、利用者の増加にもつながっています。
支援者とともに:「また応援したい」と言われるプロジェクトとは
岸野:クラウドファンディングは、大成功で収められましたが、クラウドファンディング中、支援者の方々の反応はいかがでしたか。
加賀爪さん:支援者の方から「ハラハラドキドキして、一緒にやっている感じがあって楽しかった」と言われました。他にもクラウドファンディングを経験した方が「こんなに楽しいのは初めて」と言ってくださったんです。一緒に喜んでくれていたようで、寄付額が増えていく様子を楽しんで見ていただけたみたいです。
岸野:多くの支援者さんを巻き込んでクラウドファンディングを進められていましたが、どのようなことを意識されていましたか。
加賀爪さん:ページの更新を頻繁に行い、支援者の方に進捗状況をこまめにお知らせすることを大切にしていました。その結果、寄付額が増えるたびに「頑張ってください」といった応援メッセージをいただき、活動に大きな力をもらいました。また、「支援したプロジェクトがここまで成長する様子を見られて嬉しい」とおっしゃる方もいて、支援者との絆がより深まったと感じています。
支援者の方々の声は今でも励みになっています。プロジェクトがきっかけで私たちの活動を初めて知り、「次も何かあればまた応援したい」とおっしゃってくださる方も多いです。このつながりは本当に貴重だと感じています。
ペットロスから生まれた優しさ:動物と人を支える仕組み作り
岸野:動物保護活動にはいつから関わられているのでしょうか。
加賀爪さん:一番のきっかけは私自身の愛犬との別れです。愛犬が亡くなったとき、ペットロスの辛さを体験しました。それを乗り越える中で、動物保護施設の存在を知り、動物と人との関係や、動物に対する社会のサポート体制について深く考えるようになりました。愛犬を失った悲しみが大きかった分、「たくさんの動物が捨てられている現状に驚き、何とかしたい」と思うようになり、それが現在の活動の出発点になりました。
最初に、動物保護施設で働きました。そこでは保護犬や保護猫のお世話、新しい飼い主を探す活動に携わりましたが、その中で痛感したのが、飼い主が高齢や病気などの理由でペットを手放さざるを得ない現実です。時には、愛情が薄れて「手放そう」と考えるケースもありました。一方で、「介護が大変で世話ができない」と泣く泣く相談に来る飼い主さんもいて、その愛情の深さに胸が締め付けられる思いでした。
老犬の場合、「あと少し踏ん張れば最期まで一緒にいられたのに」と思うことが多々ありました。その際、十分なアドバイスができず、ただ保護するしかなかったのが非常に辛かったですね。この経験から、「飼い主さんを支えることで、ペットと暮らし続ける選択肢を増やしたい」と思うようになり、今の活動を始めました。
岸野: そうした思いが「はまじいの家」設立の背景にもつながっているのですね。
加賀爪: その通りです。「はまじいの家」は、飼い主さんがペットを最後まで見守れる環境を提供するために立ち上げました。老犬介護は、飼い主さんの負担は大きくなりがちです。そこで、デイサービス形式で老犬をお預かりし、飼い主さんが休息を取れる仕組みを作りました。この取り組みを通じて、「自分一人ではない」と感じられる社会を目指しています。
理想の社会のカタチ:動物も人も幸せに最後を迎えられる社会へ
岸野:最後に、「はまじいの家」の今後のビジョンについてお聞かせください。
加賀爪さん:現在、「はまじいの家」では老犬の無料デイサービスを平日すべてに対応しています。しかし、施設のスペースに限りがあり、一度にお預かりできる頭数が限られています。これが現状の課題です。もっと広いスペースが確保できれば、さらに多くの犬を受け入れられるだけでなく、他の活動も充実させられると考えています。例えば、老犬介護専用の施設を新たに設け、ペットホテルを別の場所で運営するなど、規模の拡大やスペースの効率的な活用を検討していきたいと思っています。
そして、私たちは現在、「3つの貢献」を軸に活動を行っています。1つ目は老犬の無料デイサービス、2つ目は高齢者が飼うペットのお世話をサポートする「アニマルヘルパー」、3つ目は動物保護活動です。これらをさらに発展させ、社会貢献の幅を広げていきたいと考えています。特に、動物が捨てられる前の未然防止につながる取り組みを強化し、誰もが安心してペットと暮らせる社会を目指していきます。少しずつですが、できることを増やしていければと思っています。
岸野:加賀爪さんにとっての理想の社会についても教えてください。
加賀爪さん:一言で言うなら、動物も人も幸せに最後を迎えられる社会です。みんなが優しい気持ちを持ち、助け合うことができれば、多くの問題を一緒に乗り越えられると思います。たとえば、老犬介護も一人で抱え込むのではなく、周囲の人たちと助け合いながら取り組む形が理想的ですね。
私たちスタッフだけが頑張るのではなく、ペットホテルを利用してくれている犬たちも活動を支えてくれているんです。若い犬たちが間接的に老犬介護の活動費を助けているというイメージです。動物も人も直接的・間接的に支え合いながら、みんなが幸せに過ごせる社会を目指しています。
編集後記:老犬やその飼い主さん、そして何より動物たちのことを誰よりも真剣に考えている加賀爪さん。今回のインタビューを通して、加賀爪さんの動物への深い愛情をたっぷりと感じることができました。「無料の老犬デイサービス」というアイデア、皆さんは聞いたことがありますか?恥ずかしながら、私は今回初めて知りました。この取り組みは、動物保護の課題に核心的に迫るものであり、動物や飼い主さんを心から大切に思っているからこそ生まれたものだと感じました。動物も人も幸せに「最後」を迎えられる社会の実現に向けて、加賀爪さんの挑戦はまだ始まったばかりです。これからの活動に期待が高まります。貴重なお話をありがとうございました。