死産や妊活の体験談の本を出版して、全国の天使ママに届けたい!

2024.12.23
目次

プロジェクトの要約:流産や死産、新生児死亡などで赤ちゃんを亡くした母親たち(天使ママ)に向けた本を出版するための取り組みです。実行者の堀井斉未さんは、自身も死産を経験した当事者として、同じ境遇にある母親たちの心の支えとなる場を提供してきました。堀井さんの体験を通じて感じた悲しみや葛藤、再び立ち上がるまでのプロセスを赤裸々に綴ったこの本は、全国の天使ママたちが「一人ではない」と感じられるよう願いを込めて書かれています。
プロジェクトURL:死産や妊活の体験談の本を出版して、全国の天使ママに届けたい!

友人の一言が後押しに!出版を実現した支援の形

岸野: クラウドファンディングを始めようと思ったきっかけについて教えていただけますか。

堀井さん: 一番の理由は、出版費用を賄うための資金が足りなかったことです。これまでも赤ちゃんの命名書を作って販売するなど、自分でできる範囲で資金を集めていましたが、それでも十分ではありませんでした。そんな時、友人から「クラウドファンディング」という方法を教えてもらいました。「資金調達だけでなく、本の存在を多くの人に知ってもらえる機会になる」と考え、この方法を選びました。


岸野: クラウドファンディング後、プロジェクトはどのように進められたのですか?

堀井さん:みなさんから応援いただいたお金で、本を無事に出版することができました。また、目標金額を超えて応援いただいた資金で、流産や死産を経験されたお母さんたちの支援活動の運営を続けていきたいと考えています。これらの活動を通じて、少しでも多くの方々に心の支えを届けられたらと思っています。

岸野: 実際に出版された本にはどのような内容を書かれたのですか。

堀井さん: 私が経験した死産、その後の妊活、さらにもう一度流産したことについて書いています。また、自助グループを立ち上げて活動するまでの経緯もまとめています。編集者の方からのリクエストで、夫のことや結婚生活についても書きました。親の反対を乗り越えて結婚した話や、夫がどのように支えてくれたかなど、正直に綴っています。
死産後に感じた「なんで私だけがこんな思いをしなきゃいけないのか」とか、「他の赤ちゃんが亡くなればよかったのに」という黒い感情について書くべきか、とても悩みました。ただ、こうした感情も実際に経験すると出てくるものだと伝えたくて、あえて書くことを選びました。その結果、「私も同じ気持ちだった」という共感の声が多く、本当に書いてよかったと思っています。

本の広がり:「涙が止まらなかった」感想が続々と届く理由とは?

岸野:実際に本を手にした読者からは、どのような反響がありましたか。

堀井さん: 本当にたくさんの感想をいただきました。SNSやLINEを通じて、「読んで涙が止まらなかった」「何度も読み返しました」という声が届きました。特に、流産や死産を経験された方々が「この本を読んで、自分の感情を見つめ直せた」と言ってくださったことが印象に残っています。また、「今まで周りの幸せを願うばかりだったけど、流産した時に自分の中にある黒い感情に気づいて驚いた」という方が、「本を読んで自分の感情を受け入れる勇気が持てた」と話してくださり、本当に書いてよかったと思いました。

また、当事者以外の方からも感想をいただきました。「赤ちゃんを亡くした親が感じる気持ちを初めて知った」と教えていただきました。特に新聞に掲載された際、「赤ちゃんのことを自慢したかった」と話した部分に多くの方が驚いたそうです。亡くなった子どもも、普通に生まれてきた赤ちゃんと同じように大切な存在であることを伝えられたのが嬉しかったです。
他にも「本を読んで夫婦で気持ちを共有することができた」という感想がとても印象的でした。流産や死産を経験すると、どうしても夫婦間のコミュニケーションが難しくなりがちですが、本を読むことで話しやすい雰囲気が生まれたと聞き、本当に嬉しく思いました。

天使ママに届け──本でしか叶えられない夢

岸野: そもそも、今回のプロジェクトで本を出版するという手段を選ばれたのは、どうしてでしょうか。

堀井さん: 一番の理由は、全国の「天使ママ」たちに私の経験を届けたいと思ったからです。「天使ママ」というのは、流産や死産などで赤ちゃんを亡くしたお母さんたちのことを指す言葉です。この言葉には、赤ちゃんを愛する気持ちや、その存在を大切に思う気持ちが込められています。お話会はとても意義のある場ですが、参加できる人は地元や近隣の限られた方々に限られてしまいます。そこで、もっと広い範囲で、自分の声を届ける方法として本を選びました。また、私は文章を書くのが好きで、自分の言葉で丁寧に伝えることができるのも本の魅力だと感じました。
本は記録として一生残るものなので、その点も大きかったです。SNSは一時的な流行や仕様の変化で消えてしまう可能性もありますが、本なら形として残り続けます。それに、私自身の経験やわが子の存在を記録としてしっかり残しておきたかったんです。

実は、将来的にはこの本を映画化したいという夢もあります。本という形にすることで、次のステップへ進む道筋を作れると考えました。
何より、本を手に取った人たちが、私の思いやメッセージを受け取ってくれることを願って選びました。それが、天使ママたちの心の支えになれれば嬉しいです。

活動の源泉:天使ママたちを助けること。

岸野: これまで、堀井さんの活動を通じて、数多くの天使ママたちを助けられてきたと思いますが、堀井さんの原動力となるものは何でしょうか。

堀井さん: かつての自分のように悩んでいる人たちを少しでも助けたいという思いが、私を動かしています。流産や死産を経験すると、周囲に話しづらかったり、自分でも感情の整理がつかなかったりすることが多いです。ただ、私がお話会に参加したとき、「一人じゃない」と感じられたことで心が救われました。その経験があるからこそ、同じような思いを抱える方々の力になりたいと思っています。

岸野: お話会の経験についても、詳しくお伺いしてもよろしいでしょうか。

堀井さん: お話会では、参加者が自由に赤ちゃんについて話していて、私も自分の子どものことを話すことができました。通常の赤ちゃんなら「性別は?」「名前は?」と自然に聞かれますが、流産や死産の場合、そうした質問はされません。それがとても辛かったんです。
でも、お話会では全員が共感し合い、「私の気持ちはおかしくない」と初めて感じられました。以前、友人に「亡くなった赤ちゃんの話をするなんて変だ」と言われたことがあり、自分がおかしいのかと思っていました。ただ、お話会での体験がその気持ちを救ってくれたんです。

岸野: お話会での経験から実際に堀井さんが活動を始められるまで、どのような流れがあったのですか。

堀井さん: 私が流産や死産を経験したとき、周りの人もどう接していいかわからず、話す場がなく孤独を感じていました。そんな中、ネットで当事者だけのお話会を見つけて参加したんです。そのとき、「自分だけじゃない」と感じられ、心が救われました。この経験から、「福井にもこういう赤ちゃんのことを話せる場を作りたい」と強く思い、活動を始めるきっかけとなりました。

最初は全国組織の支部として活動を始めましたが、続ける中で「地域密着型で赤ちゃんを亡くした親の支援がしたい。本も出したい。」という自分のやりたいことが明確になりました。その思いを実現するため、独立して「天使の母の会 福井を立ち上げました。この活動では、「話したい人が安心安全に話せる場を作ること」を最も大切にしています。赤ちゃんの存在が肯定され、親の気持ちに寄り添うことで、大きな癒しにつながると感じています。

理想の社会:子どもと女性が生きやすい社会に向けて

岸野:今後はどのように活動を展開していきたいと考えられていますか。

堀井さん: 一番の目標は「やめないこと」です。
流産や死産を経験された方の居場所作りは、自分の状況が大変な時は一時休むことがあっても、細くても長く続けていきたいと思っています。また、映画化は今でも大きな目標の一つです。本を読んでくださった方々に出版社宛てのハガキを送ってもらう形で、映画化への声を集めていますが、もっと多くの声が必要だと感じています。それから、法人化や会社設立も考えたことはありますが、収入や税金面での課題があり、現時点ではまだ踏み切れていません。それでも少しずつ、具体的な方法を模索しながら進めていきたいと思っています。

岸野:最後に、堀井さんが目指す理想の社会について教えていただけますか。

堀井さん: 子どもを亡くした親への理解がもっと広がってほしいと願っています。講演会を開いたり、気持ちを共有できる場を増やすことで、社会全体で当事者を支える仕組みを作りたいです。精神的にも経済的にも豊かで、誰もが安心して暮らせる社会が理想です。

編集後記:全国の天使ママたちに向けて、実体験を通じて「仲間がいるんだよ」と伝えている堀井さん。その活動によって、これまでどれほど多くの人が救われてきたのでしょうか。
インタビューで堀井さんがおっしゃっていましたが、日本では50人に1人のお母さんが死産を経験しています。そして、その経験から深い孤独感を抱えるお母さんが多いことも事実です。堀井さんの活動は、そんなお母さんたちを優しく包み込む大きな支えになっていると感じました。
お母さん、子ども、そして全ての人が安心して暮らせる社会へ──。私自身も、そんな社会で生きていきたいと強く思います。

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