プロジェクトの要約:セネガルの首都ダカールで日本食レストラン「和心」を運営する代表原田さんは、セネガル在住の人々に「和」の文化と美味しさを届けるため、2号店を開業しました。1店舗目の日本食レストラン「和心」は、地元の食材を活かしながら日本料理を提供し、人々から愛されているお店です。原田さんは、現地スタッフの育成や雇用創出にも力を注ぎ、地域との共生を重視しています。
プロジェクトURL:セネガルで日本食レストラン2号店を開業したい!~アフリカの和をもっと大きく~
目標額270%達成!ーーセネガルから届ける成功の裏側
岸野:2号店「大和」がグランドオープンしてから約1年が経ちますね。クラウドファンディングの成功から現在に至るまでを振り返って、いかがですか。
原田さん:クラウドファンディングで目標額を達成できたことは、本当に大きな意味がありました。計画していたことが具体化し、物件契約や内装工事などの準備を迅速に進めることができました。当初は、「本当にお客さんが来てくれるだろうか」という不安もありましたが、少しずつお客さまが増え、常連さんもついてくれるようになりました。目標額以上のご支援をいただいたことには驚きましたし、感謝の気持ちでいっぱいです。これだけ多くの方々に支えられたことで、自信がつくと同時に、責任の重さも改めて実感しました。
岸野: クラウドファンディングを通じて大成功を収められましたが、支援者とはどのように交流されたのでしょうか。
原田さん: ありがたいことに、多くの支援者が純粋な応援の気持ちで支援してくださいました。「リターン目当て」ではなく、「原田さんの挑戦を応援したい」という声をたくさんいただきました。セネガルで知り合った方々や、日本でお世話になった方々からも支援をいただき、SNSを通じて「どうなったの?」といったコメントやメッセージをいただくたびに、近況を報告するようにしています。
岸野: クラウドファンディング終了後も支援者とのつながりが続いているのですね。記憶に残っているエピソードはありますか。
原田さん: 印象深かったのは、セネガルで知り合った友人やお客さんが支援してくれたことです。日本に留学経験のあるセネガル人や、現地でインターンを経験した日本人の若い方も支援してくれました。また、リピーターのお客さんが「これからも応援しています」とメッセージをくださったことも、本当に嬉しかったです。
現地文化との調和――物件契約からスタッフの対応まで
岸野:実際にオープンしてからのお客さんの反響はいかがですか。
原田さん:想像以上の反響をいただきました。現地在住の外国人やセネガル出身の方々がSNSや口コミを通じて広めてくださったおかげで、「大和」の名前が少しずつ知られるようになりました。また、1号店に通ってくださっていたお客さまが「新しいお店にも行ってみたい」と応援してくださったのも本当に嬉しかったです。そのおかげで、少しずつ地域におけるお店の存在感が高まり、根付いてきたと感じています。
岸野: 「大和」が現地で好評だと伺い、こちらとしても嬉しい限りです。「大和」を開店するにあたって、印象に残っていることはありますか。
原田さん:物件契約が一番の課題でした。セネガルはイスラム教徒が多い国なので、アルコールを提供する飲食店に対する制約があります。賃貸オーナーが「自分の物件でアルコールを出すことを許したくない」と考えることも多く、いくつも物件を断られました。最終的に見つけた物件も、契約までにかなりの労力を要しました。
岸野: セネガルの独自の文化やビジネス習慣に適応する必要があるんですね。
原田さん: そうですね。他にも、スタッフ間の文化の違いが課題でした。セネガルでは「自分の仕事以外はやらない」という分業意識が強く、日本のようにチームで助け合うという感覚が薄いんです。例えば、キッチンスタッフが「洗い物は自分の仕事ではない」と主張することがあります。この違いを受け入れつつ、時には注意を促しながら運営しています。ただ、こうした文化の違いを理解することが大切な要素だと感じています。
家族とともに描く新しい挑戦――2号店『大和』の誕生
岸野: 今回、2号店「大和」を始めるためにクラウドファンディングを実施されましたが、そもそもなぜ2号店をオープンしようと思ったのでしょうか。
原田さん:1号店を始めて数年が経ち、日本からスタッフが来てくれるようになり、私自身の時間に少し余裕ができました。そのタイミングで、「新しいことに挑戦したい」という気持ちが芽生えたんです。実はコロナ前にも2号店の計画があったのですが、その時は大きなホテルの敷地内に出店する話が進んでいました。しかし、コロナ禍の影響でその計画が白紙になり、新しい挑戦を控えることになりました。コロナが落ち着き始めた1〜2年前から、再びプロジェクトを始める余裕が出てきて、改めて2号店開業の計画を具体化しました。
岸野: 最終的に2号店の開業場所を選ぶ際には、どのような点を考慮されたのでしょうか?
原田さん: 家族との話し合いが大きなポイントでした。当初は地方のリゾート地での開業も考えましたが、息子が「友達と離れるのは嫌だ」と話してくれて。それを受けて、ダカール市内の別の場所に決めました。2号店の場所を選ぶ際には、家族の生活環境を優先しつつ、ビジネスの可能性もしっかり考慮しました。繁華街のような場所も検討しましたが、最終的には息子が学校の友達と近くに住めるエリアを選びました。家族が満足できる環境を整えることで、長期的に安定したビジネス展開が可能になると考えています。
日本食を通じてアフリカで挑む――セネガルでの第一歩
岸野: 家族を大切にされていて、素敵ですね。ここまで、「大和」が多くの人に愛されているエピソードをお伺いしましたが、このセネガルという土地で、日本食レストランを始めようと思ったきっかけをお伺いしてもよろしいでしょうか。
原田さん: 2010年に初めてセネガルを訪れたときに、「ここで自分の仕事を持てたら面白いのではないか」と思ったのがきっかけです。ダカールの街を歩いていると、日本食レストランがいくつかありましたが、それらはセネガル人や中国人、フィリピン人、レバノン人などが経営しているお店で、日本人が運営する店は一軒もありませんでした。「自分は日本人として、本格的な日本食を現地で提供する価値があるのでは」と思ったことが、具体的に行動を起こすきっかけになりました。
岸野: 2010年にセネガルを訪問されたとのことですが、そもそもセネガルを訪れるきっかけは何だったのでしょうか。
原田さん: 実は最初にセネガルを訪れたのは、職場のセネガル人同僚に誘われたのがきっかけです。それまでアフリカに興味はあったものの、どの国に行けば良いか分からず、具体的な情報もありませんでした。そのタイミングでセネガルを紹介され、「それなら一度行ってみよう」と思ったんです。実際に行ってみると、事前に抱いていたイメージとは全く違っていました。
岸野: どのように、イメージと違っていたのでしょうか。
原田さん: 正直に言うと、セネガルについてはもっと「貧しい国」というイメージを持っていました。実際には食べ物や住む場所に困っている人は少なく、むしろ明るく前向きな人々が多い国でした。仕事は少ないですが、みんなが助け合いながら生活していて、「ここなら自分も楽しく暮らしながら働けるのでは」と感じました。それがセネガルを選んだ大きな理由です。また、未開拓のビジネスチャンスが多い国だと感じたのも決め手になりましたね。
岸野: セネガル人々に惹かれたんですね。
原田さん: セネガルの人々の優しさや助け合いの文化に触れ、自分自身がここで何かを成し遂げたいという気持ちが強くなりました。そして、日本食レストランという形で、自分のスキルや経験を生かして挑戦してみようと思ったんです。
将来ビジョン――日本食レストランの成長と農業への挑戦
岸野:今後のビジョンについてお聞かせください。
原田さん:現在はオープンしてようやく営業が安定し始めた段階です。まずは自分が店に立ち、お客様に喜んでいただける場所を目指しています。「日本食が食べたい」と思った時に、「大和」で満足していただけるようなお店にしていきたいです。長期的にはまだ具体的な計画はありませんが、セネガルに根ざした飲食業を続けていきたいですね。
また、以前から農業にも関心を持っており、セネガルの農業に可能性を感じています。セネガルの地方では、ダカールとは生活環境や水準が大きく異なります。その中で、地方の農家さんたちと協力しながら何か新しい取り組みを始められないかと考えています。セネガルは、農業が主要産業なので、飲食業との連携を通じて地域の活性化に貢献したいです。セネガルで何かを始めるなら農業をやりたいという思いは、当初から持っています。
岸野:理想の社会についてもお聞かせください。
原田さん:セネガルには、人の繋がりを凄く大切にする文化があります。例えば、職場に子どもを連れて行くと、周りが自然と受け入れてくれるような、人と人が関心を持ち合う社会です。一方、日本は素晴らしい国ですが、社会が役割ごとに分断されている印象を受けます。それが生きづらさにつながる面もあると感じます。全てが完璧な国などは存在しませんが、日本とセネガルそれぞれの良いところを取り入れ、老若男女が関わり合える社会が理想です。セネガルのように助け合いの姿勢が根付いた社会が日本にも広がれば、より良い未来につながると思っています。
編集後記:セネガルの首都ダカールで日本食レストラン「和心」を運営されている原田翔太さんにお話を伺いました。セネガルで日本食レストランという、未開拓の分野で、果敢に挑戦されている姿から、原田さんの順応性の高さと熱意を感じることができました。また、インタビューでは、ご家族の意見を大切にされながら立地を選ばれたというエピソードを伺うこともできました。原田さんの優しい人柄が伝わってきます。セネガルを訪れる機会がありましたら、ぜひ「和心」や「大和」に足を運んでみてはいかがでしょうか。貴重なお話をありがとうございました。