プロジェクトの要約:YUMYUM Gardenは、沖縄・やんばるの自然豊かな環境を活かした循環型ヴィラの名称です。敷地内には、様々な果樹やハーブが育つ「食べられる生態系」を目指した庭が広がり、訪れる方々が自然の恵みを体験できます。自然素材や廃材を使ったリノベーションにより、環境に配慮した快適な空間を提供しています。
プロジェクトURL:世界遺産のやんばるの山に、循環型の食べられるお庭があるヴィラを完成させたい!
クラファンで叶えた長年の夢
成田:クラウドファンディングから1年経過しましたが、プロジェクトはどのように進展していきましたか。
北原さん:本当に、クラウドファンディングがなければここまで来られなかったと思います。オープン前は財政的にかなり厳しい状態でしたが、幸い、多くの方の支援で必要な資金を集めることができ、5月には最低限の設備を整えてオープンできたんです。1年経った今では、ようやく少し設備投資ができるくらい資金がたまってきて、より快適な空間を作るための余裕も出てきました。本当に助かりました。
クラウドファンディングは僕にとって、単にお金を集める手段というだけでなく、多くの方の応援を力に変えるきっかけでもあったと思っています。オープンしてからの毎日が忙しいですが、支援者の期待に応えたいという思いで続けられています。
自然素材と持続可能な空間づくり
成田:実際に、ヴィラを開始されてみて、お客さんからの反響はいかがでしたか。
北原さん:そうですね、好評ですね。ヴィラに宿泊された方と直接話をする際に、「今まで泊まった場所の中で特に最高だった」とお褒めの言葉をいただくことがあり、とても嬉しく感じています。自然素材を使いながら、シンプルで温かみのあるデザインを心がけていて、そういった細部が宿泊者の心に響いているようです。
成田:ヴィラの空間づくりにこだわられたんですね。
北原さん:そうですね。自然素材を使うことにこだわりました。ヴィラの内装は廃材や流木を活用していて、見た目は綺麗に仕上げつつも、自然の温かみを感じられる空間にしています。また、最近ではテントサウナも購入しました。ここも自然に触れながらリラックスできる場所として楽しんでもらえたらと思っています。
循環型ガーデンで実現する持続可能な農業
成田:他にも、ヴィラを作られるうえで、工夫されたことはありますか。
北原さん:ヴィラの庭『ヤムヤムガーデン』をつくり、活動を広げています。『ヤムヤムガーデン』では、農薬や化学肥料を使わず、不耕起栽培を取り入れることで、土壌や自然の力を最大限に活かした庭づくりを目指しています。今はシークワーサーやグアバ、レモングラスといった果樹やハーブを育てていますが、まだまだ手が回らない部分もあります。将来的には、もっとたくさんの種類の植物を育てて、収穫時期が異なる植物を組み合わせることで、通年で何かしら収穫できるような庭にしたいと考えています。そして、循環型農業を実現しつつ、訪れる人々がその場で収穫し、新鮮なまま味わえる「食べられるお庭」を作っていきたいです。
持続可能な「循環」のかたちとは?
成田:ここまで、循環型の食べられるお庭があるヴィラのお話を伺いましたが、元々、「循環」というコンセプトに関心を持たれていたんでしょうか。
北原さん:正直、最初から強い問題意識があったわけではなく、調べていくうちに興味が湧いたんです。もともと化学肥料や食料の問題をうっすらと知っていましたが、実際にヴィラを運営する中で、自分たちやお客様が食べる分だけを育てればいいと考えていました。その過程で、出た有機物を堆肥として土に返す方法に出会い、『循環』を意識するようになりました。
成田:なるほど、調べながら深掘りしていく中で、自然に循環の考え方が取り入れられていったんですね。
北原さん:はい。おかげで今では、堆肥だけでなく、廃材や流木なども再利用しながら内装や家具も作っています。単なる農作物の循環に留まらず、エネルギーの面でもバッテリーを活用して、将来的にはソーラーパネルでの発電も視野に入れています。自然の恵みをうまく活かすことで、ヴィラ全体が循環型のライフスタイルを体現する場所にしていきたいです。自分たちが自然の一部として生活し、さらにその生活が他の人々の参考になるような、そんな循環型の生活を提供していけたらと思います。
災害に備えた自立型ライフスタイルの実践
成田:自立型ライフに向けて、具体的にはどのような取り組みをされていますか。
北原さん:一つとして、災害に備えて自立を意識した準備も進めています。沖縄は台風が多い地域なので、停電時にも対応できるように、240Aのバッテリーを2台設置しています。これがあれば、スマホの充電などができるので、お客様も安心して過ごせます。今年は台風が少なかったので使う機会はありませんでしたが、いざという時に備えがあるのは心強いですね。今後はソーラーパネルを導入して、完全なオフグリッド生活も視野に入れています。
もし災害時に電力が使えなくなったとしても、自分たちが困らないように、そして必要があれば地域の方々にも手助けできるようにしたいと考えています。こうした準備も、持続可能なライフスタイルの一部だと感じていますし、都市生活をしている人たちにも自立の重要性を伝えられたらと思っています。
子どもたちと地域社会への貢献
成田:地域との関係性も重視されているんですね。
北原さん:はい。地域とのつながりを深めていくことはもちろん、地域の子どもたちと関わりを持っていきたいです。果樹が育ってくると自分たちだけでは食べきれないほどの量になってくると思うので、地元の子どもたちがここで収穫体験をできるようにしたいですね。また、植え付けの体験や自然観察を通じて、食べ物がどのように育つのかを学んでもらえる場所にしたいです。
子どもたちが自然と触れ合い、成長を見守ることで、自分で収穫する喜びや、命の循環を感じてもらえると嬉しいですね。ヴィラは単なる宿泊施設ではなく、地域のコミュニティの場としても活用していきたいと思っています。
成田:それは素敵な構想ですね。
北原さん:私たちがこの土地で目指している持続可能な生活の形が、地域の皆さんや次世代にも伝わり、少しでも環境への意識が広がっていけば、社会に対するささやかな貢献にもなると思っています。
自然との共存が生み出す持続可能な未来
成田:北原さんはどのような社会を目指されていますか。
北原さん:理想とするのは、持続可能で自立した暮らしを当たり前にできる社会ですね。たとえば、エネルギーも水も自分たちで賄えるようになれば、災害時にも自分たちが安心して生活を続けられます。私が目指すのは、社会全体を変えるような大それたことではなく、自分ができる範囲で自立していくことです。その姿を見た人が、自分たちも同じように自立できることを知り、影響を受けてくれれば、それが社会全体の変化につながるかもしれないと思っています。
私たち一人ひとりが少しずつでも自立を意識し、準備をしていけば、都市生活者も含めてみんなが災害時や予期せぬ事態に対応できるようになる。そんな安心感のある社会が、私たちにとって理想なんです。
そして、そのためにパーマカルチャーの理念にも共感しています。持続可能なシステムを作り、大切なものにはバックアップを取ることで、地域に根差した暮らしが育まれていく。ヴィラはその一端として、訪れた人々にもそういった自立した暮らしの魅力を感じてもらえる場所になればと願っています。
編集後記:今回は、食べられる生態系のある農園付きヴィラを運営されている北原さんにお話を伺いました。北原さんのヴィラは、パーマカルチャーの理念に基づき、環境との調和を重視した宿づくりを目指しており、その挑戦の姿勢が非常に印象的でした。地元住民やゲストなど、多くの人を巻き込みながら、理想的な社会に向けて前向きに取り組む様子から、北原さんの思いが強く伝わってきました。また、災害に備えた自立型のライフスタイルの提案や、地域の子どもたちとの交流も積極的に行い、宿としての役割を超えてコミュニティ全体への貢献にも力を入れています。今後もこのヴィラが持続可能な未来へのモデルとなり、社会や地域に新たな価値を提供し続けることが期待されます。北原さん、貴重なお話をありがとうございました。